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ええいままよ

大学やめたい

自称進学校の女王

私が通っていた高校はいわゆる自称進学校だった。


課題と予習がムダに多いことで知られており、要領の悪い生徒だった私は毎週末「こんな学校クソだ!!」と叫び白目を剥きながらそれらを片付けていた。


テスト前は大量の課題に追われてまともに勉強できず、国語以外、特に数学は毎回惨憺たる結果に終わった。0点とったことあります、ひどいね。


教師たちはみな国公立至上主義で、変人ばかりだった。こんな奴が教師やれてるなんて信じらんねえな、という教師も少なくなかった。


そんな中、とても風変わりな女教師がいた。




高校に入学したばかりの4月、教室では古典の授業が行われており、生徒はみな顔をこわばらせ、教室は異様な緊張感に包まれていた。



初っぱなからキレキレで、予習をしてこなかった男子生徒に対し烈火のごとく怒り、その様子はまるでメデューサのようだった。彼女はとても声が大きく、刺すような張りのある声をしているので、怒ったときにはもうとんでもなく迫力がある。


あの先生はやばい、と生徒の間でも話題になった。私は古典の予習だけはちゃんとやるようにしていた。


彼女の当て方は月と日にちを足した数の出席番号の人から斜めに当てていくやり方だった。(例・2月22日だったら2+22で24番)



みんな授業前に計算して今日自分が当たるかどうかを確かめ、予習が不十分な人は誰かからノートを借りたり他の人から見せてもらったりして、予習を十分してある人でも訳が正しいかを友達と確かめ合ったりしていた。


4月のある日、私はきょうは当たらんだろうな、と思って授業に臨んでいた。一応、訳や活用の書き込みはやってきていたし、かしこい友人のノートを見せてもらってちゃんと確認してあった。


しかし、授業は予想以上にスピーディーに進んでいき、遠くの同じ斜め列のひとが当たってしまった。


「ヒイイやばい」などと思いながら自分のノートをひたすら眺めて準備していたら、女教師がいまやっていた本文には出てこない、まったく関係ない動詞を黒板に書いて「これはなに活用や?」と私の斜め後ろの人に聞き始めた。


斜め後ろの人(女子)は「あ…」と言ったきり考え込んでいるのか黙ってしまった。(これが男子だったら怒られている。女子にはちょっと優しい)


女教師「じゃあ、○○(私)、この活用はなんや?」


ヒーーー!もうどうにでもなれ!!と勘で答えた。


私「あ……………さ、サ行へんかくかつよう?」



女教師は私をじっと見つめ、にやっと笑い「お前、国語のテストでいい点取るな」と言った。


多分私は「え?」って顔をしていたと思う、その言葉になにか返したのか、ただ黙っていたのかは覚えてない。



そのあと授業はふつうに進行してゆき、チャイムが鳴ると女教師はすばやく颯爽と出ていった。



横の席の友達に「誉められとったじ〜」と笑われ、他の席からやってきた友達には「なんかすごい緊張しとったね」「怯えてたよ」などと言われた。



女教師が言ったとおり、私は国語のテストだけはいい点を取った。それはそう言われて嬉しくて自信がついたのかもしれないし、国語が得意なのを女教師があのことで見抜いていたのかもしれない。


その後、女教師が非常にユーモアのある先生だということがだんだん分かってきて、授業でもたまに自分の話をしたり、生徒をいじったりして、そんなひねくれて溌剌とした彼女は生徒にとても人気があった。

でも、相変わらず怒るときは閻魔のようだったし、機嫌の悪い日は荒々しく怒鳴り、その声は一番端の教室まで響き渡るほどだった。



部活で少し彼女に関わる機会があった。まさかの顧問だった。最初は「まじかよあの先生かい」と怖がっていたのだけど、二学期に入るころにはふつうにおしゃべりできるようになった。


彼女が別の学校に赴任する前、ツーショットを撮ってもらった。これを4月の私に見せてやりたいなと思った。絶対合成だと思うにちがいない。



彼女はガーナチョコが好きだと言っていた。スーパーでガーナを見かけたとき、たまにその先生のことを思い出す。